糸魚川市 官製談合事件のミステリアスな部分
2021年06月26日
糸魚川市で発覚した官製談合事件だが、これまで県内で摘発された事件より「構造的で根深い」とも言われる。市議会での追及も始まり、第三者委員会も立ち上がるという。逮捕、起訴された市職員や建設会社の営業部長の公判も遠からず開始されるはず。どこまで不正の構造を解明できるか注目だ。
解せない、警察から市への連絡
官製談合事件で市職員ら3人が逮捕されたのは5月19日。その後、市職員と、市内の建設会社、猪又建設の営業部長が起訴された。この事件が発覚する以前、同市では1月25日に警察から「不正が行われる恐れがある」と連絡が入り、翌日に予定された市庁舎のトイレ改修設備工事の入札が中止になった。
解せないのは警察による市への連絡だ。警察による建設業者らに対する事情聴取だが、1月25日の段階で世間の噂に上っていた。警察が捜査情報に基づき、「不正が行われる恐れがある」などと連絡することは前代未聞というほかない。警察の通報は「未然に不正を防いだ美談」ととれるかもしれない。だが悪意に解釈すれば「捜査情報の恣意的利用」ととることもできる。拡大解釈すれば、「不正が行われるおそれが」と警察が行政機関に連絡することで、いくらでも入札を中止にすることができる。さらに行政の業務ばかりか、民間の経済活動に対しても介入、操作できることになってしまう。
いったいどのような意図で、警察のどの部署が連絡したのか? 連絡を受けたという糸魚川市の総務部長は、「警察ということで、(県警本部か糸魚川署かも含め)具体的な部署はお答えできません」としている。
これまでも糸魚川市役所に警察から「不正が行われる恐れがある」といった連絡はあったのだろうか? そして今回の連絡はどのような中身だったのか?
「1月の入札中止の件に関して、初めて新潟県警から連絡があったものです。(内容は)具体的なものではなく、『不正が行われる恐れがある』旨の連絡があったものです」(糸魚川市総務部長)
県警本部の広報担当部署は、「以前から御社の取材には対応しておりません」と、取りつく島もない。行政機関への「不正が行われる恐れがある」といった連絡が適切なものか、県警OBに聞いても、「事実関係が不明だから答えようがない」と言うのみ。
糸魚川市の官製談合で、警察は少なくとも二つの不正について承知していたことになる。一つは事件とされた昨年12月8日開札のされた糸魚川市発注の建築工事、「新駅公衆トイレ整備工事」の入札に関するもの。そしてもう一つが、警察の連絡に基づいて中止となった市庁舎のトイレ改修設備工事の入札に関するもの。
この二つのうち前者、昨年12月8日の入札を事件としたのは何か意図的なものがあるのだろうか?
「特に勘繰る必要はないのではないか。こうした事件は公判の維持が可能かが重要だ。裁判をやって、よもや負けるようなわけにいかない。だから昨年12月の入札の方がきっちり証拠固めできるということで選択しただけだろう。警察が市役所に通報したのも、単に不正が行われるのを見過ごすことについて、それを潔しとしなかっただけではないか」(上越市内の建設業者)
この一件は市議会6月定例会でも一部取り上げられたらしいが、結局のところ具体的な内容は明らかにされなかったようだ。…続きは本誌