村上市 コロナ感染者が市施設で同時多発の”怪”
2021年05月27日
村上市で4月初旬をピークに、新型コロナウイルスの感染が急拡大した。一時は1日の感染者が14人となり、新潟市と比較して人口換算すれば200人近いレベルにまで達した。しかも感染は保育園など市の施設に集中。同時期に、市の施設で多発した感染の原因について、市側から具体的な言及がない。それゆえ、かえって疑心暗鬼の状態が生じてしまった。
人呼んで「四時半の男」
「今日は早いみたいだね」
4月下旬の午後4時過ぎ、村上市内の自営業者がこう言った。何やら屋外で「ポン、ポン、ポーン」という昔懐かしいチャイムの音が響く。次いで女性の声で「こちらは広報村上、村上市長からのお知らせです」とアナウンスがあった。
声は屋外にある防災情報無線の拡声スピーカーから流れてくるものらしい。防災情報無線とは、市町村などが設置していて、災害情報などを屋外拡声スピーカーや、住民の自宅にある戸別端末に伝えるシステムのことだ。
村上市では3月の末から4月、5月と、新型コロナウイルス感染者の確認が相次いだ。そのたびに同市の高橋邦芳市長が防災情報無線で感染者の発生を伝えた。「お知らせ」は女性の声の後、たいていこんなふうに続く。
「市民の皆様、村上市長の高橋です。村上市内における新型コロナウイルス感染症患者の発生についてお知らせいたします。本日、村上市内において、〇〇〇例目となる、感染症患者が〇名確認されました。〇〇〇例目は、〇×□△に勤務する、〇歳代、男性です」
感染者が確認された場合、おおよそ午後4時30分頃に防災無線が流れる。連日、市内で感染者が確認されたため、市長のアナウンスも毎日のように、ほぼ同じ時刻に流れた。それゆえ高橋市長は「四時半の男」という異名を頂戴したとか。
このほか、別掲のように、動画サイトの「YouTube」に同じようなお知らせで高橋市長が登場。その内容は防災情報無線と同じ。冒頭に登場した市内の自営業者は、高橋市長が登場するお知らせは、お気に入りではないらしい。
「新潟市みたいに上品なおばさまの担当部長が登場して、〝本日の感染者は…〟と伝えるのならまだしも、何で市長がわざわざお知らせに自ら登場しなければならないのか。例えば瀬波温泉の関係者は、毎日のように防災情報無線で、〝今日の感染者は〇人〟とか流されてたまったもんじゃないですよ。自分たちはちゃんと感染症対策をしているのに、おかげでお客のキャンセルが出ているそうだ」
村上市で深刻な問題となったのは、決して高橋市長による各種のお知らせが原因ではない。新型コロナウイルスの感染者数が4月初旬をピークに市内にある市の施設を中心に、ほぼ同時期に多発したことだった。…続きは本誌