共通テスト元年 地元志向か強気の出願か
2021年01月27日
1月17日の2日目は大雪に見舞われた県内だったが、センター試験に代わる共通テストが先頃、大きな混乱もなく終わった。そしていよいよ、大学入試は本番を迎える。私立大の一般入試、国公立大の二次試験が相次いでやってくる。今回は諸々の要因が重なり、地元志向が強まると予想されている。約半世紀前の受験事情に戻りそうだというのだが、どういうことか。
新大はエリートコースだった⁉
新型コロナ禍は教育環境を激変させた。年度末から4月さらには5月にかけて一斉休校。大学ではもう普通になりつつあるが、休校期間中にオンライン授業を実施した中学・高校もあった。授業はできず、受験は大丈夫なのかと保護者を含め受験関係者は不安がった。
春に首都圏で感染者が増え、夏になっても再開できない大学が相次いだ。新潟でオンライン授業を受けるのはいいが、いつになったら通学できるのかと不満を募らせる新入生もいた。「4月から東京の国立大学に通うはずだったのに、6月になってもオンライン授業。その合間に実家の田んぼを手伝った。6月に田植えをしているとは思わなかった」
と中越地区の男子学生は昨年6月、弱り切った表情でそう話していた。
冒頭にも触れたが、今回の大学入試は地元志向が強まると予想されている。首都圏の大学に進学しても通学できるか分からない。友達ができるかも分からない。親の仕事もこの先どうなるか分からないし、一人暮らしをしてもバイトができずに生活費に苦しむかもしれない。4年後の就職環境もどうなっているか全く読めない。それだったら親も“リア友”もいる地元に残って、せめて心と
お金の安心は得たい。
共通テスト元年であることも不安に拍車を掛けた。知識量を問うセンター試験から思考力が問われる共通テストは、試行段階からどうやら難しくなりそうと囁かれていた。高得点が必要な首都圏の大学より、無難に地元の大学にしておこうという心理が働いた。また、文系でも数学を課すなど、首都圏の難関私大は受験生が敬遠するような改革を相次いで打ち出した。諸々の要因が重
なり、地元志向に拍車をかけているというわけだ。
当初は学校推薦型入試の志願者が増えるとも予想されていた。ところが、志願者を集めたのは地方の大学。首都圏の大学は思ったほど志願者が増えなかったらしい。筑波大学の学校推薦型入試を受け合格したある女子高生は、
「文系はよく分かりませんが、理系の学群(学部)は倍率1倍台ばかりだったと聞いています。私が受けた学類(学科)は1・4倍でした」
難関大ですらこの有り様である。さすがに定員割れを起こすことはないだろうが、国公私立問わず、首都圏の大学は志願者を減らすと見られている。裏返せば、地元に残る若者がかなり増えそうな様相を呈している。
「かつては地元しかなかったんですよね」
とは教員経験のある教育関係者。
「約50年前、新潟にある四年制大学と言えば新潟大学だけでした。長岡技術科学大学も上越教育大学もありませんでした。当然、公立大学も私立大学も。新大以外は短期大学だけでした。県内の高校生がまずもって目を向けたのが新大。新大に飽き足らないと東大など旧帝大を目指し、私立大学の場合は必然的に東京に出て行くというのが当時の大きな流れでした」 (同)
当時の国立大学は一期校、二期校に分類されていた。一期校が第一志望、二期校は第二志望という流れができていたから、必然的に一期校に優秀な学生が集まった。新大は一期校。
「新大は優秀だったのです」
とこの関係者は言って続ける。
「かつては地元の中心的な小中学校を卒業し、地元の進学校を卒業し、新大に進むことをエリートコースと呼んでいたものです。ところが共通一次試験の導入以降、受験戦争が激しくなりました。東大をはじめとする難易度の序列ができたのもこの頃です。首都圏の大学は難易度の高まりとともにブランド化し、有名企業に就職したいなら有名な難関大を目指すことが“フツー”になりました。
一方で地方の大学は、スベリ止め化していきます。新大もそう。そして新大のスベリ止めが、平成に入って雨後の筍のようにできた県内私大というわけです。だんだんと東京志向が強まり、新大を含め県内の大学を本命とする流れは薄まっていきました。
ところが今回、地元志向が強まりそうだという。それは、県内の大学を第一志望とする受験生が増えるということ。かつて優秀な学生が新大を目指したように、このコロナ禍をチャンスにして、来年以降も優秀な学生を集める努力を大学はして欲しいものです」…続きは本誌