国の発電計画が事業破綻で暗雲垂れ込める新潟県沖
2020年12月26日
新潟県沖で洋上風力発電の事業計画が相次いで浮上している。村上・胎内市沖では県が中心となって関係者が協議を進めているほか、10月には新潟市沖でも洋上風力発電の事業計画が表面化。しかしながらクリーンなイメージのある風力発電も実際には野鳥保護や強風時の安全確保などの問題があるほか、発電能力や採算性についても疑問視する声が根強い。
村上・胎内市での事業化の道のりは遠し
本県の地形的な最大の特色は、南北に伸びた長大な海岸線を有する点だ。県もこうした地域資源を活用し、海洋再生可能エネルギーの導入促進に力を入れている。
海洋再生可能エネルギーには波力をはじめ、洋上風力、潮汐、潮流・海流、海洋温度差などがあるが、中でも県が積極的に取り組んでいるのが洋上風力発電の導入促進だ。
その布石として、県は2018年に「新潟県沖洋上風力発電ポテンシャル調査」を実施。洋上風力発電が可能と考えられる海域として、上中下越の沿岸・大佐渡地域の沿岸(着床式洋上風力発電)と佐渡と粟島の中間部・大佐渡地域の沖合(浮体式洋上風力発電)を
挙げている。
着床式は、風車を載せる基礎を海底に固定する方法で、 水深の浅い沿岸部(水深約50㍍程度まで)に適する。導入済みの風力発電の多くは着床式だ。
これに対して浮体式は、風車を載せる浮体施設をチェーン等で海底に係留する方法で、水深の深い海域(水深約50㍍以上)に適する。
一方、県は2019年11月、県洋上風力発電導入研究会村上市・胎内市沖地域部会を設置。当該地域における洋上風力発電導入の可能性や課題について関係者との検討を開始した。
関係筋が話す。
「風力発電といえば、新潟県民なら新発田市藤塚浜にある紫雲寺風力発電所の風車を思い出す人が少なくないに違いありません。あれは陸上に設置された風力発電所ですが、村上市と胎内市ではこうした風力発電所を洋上に設置しようというわけです」 (村上市関係者)
風に吹かれてゆっくりと回転する風車を眺めていると、多くの人たちが地球環境に優しいクリーンなイメージを抱くことだろう。
実際のところ風力発電所が設置されている新発田市藤塚浜は、厚生労働省と国土交通省から「海と緑の健康地域」に指定されている。
しかしながらクリーンなイメージが先行している風力発電所も、いざ建設するとなるとかなり高いハードルをクリアしなければならないという。
前出の関係筋が続ける。
「洋上風力発電所を建設するためには、国から海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律に基づく『促進区域』に指定されることが不可欠です。
促進区域に指定されるためには、その前段として国から有望な区域としてお墨付きを得る必要がありますが、2020年7月に行われた有望な区域等の整理において、村上・胎内市沖は選定されませんでした」(同)…続きは本誌