”ちゃぶ台返し”でバス購入契約ご破算 五泉市議会の悪夢再び
2020年09月26日
五泉市はコロナ対策で市内を走る「ふれあいバス」に新しい車両の導入を決定。8月5日に中型バス購入の入札を実施した。そしてめでたく地元2社が落札。バス購入で市と落札者が正式に契約を交わすには議会の議決が必要になる。同市議会9月定例会の初日、何とこの契約を議会が否決してしまった。落札で仮契約となっていたバス購入が吹っ飛んだ。気の毒なのは落札した2社。「この入札に不正があった」という話などなかったのに…。
かつて10億円超吹っ飛ばす
「間欠泉」とは、一定の周期で勢いよく地中から地上へ熱湯や水蒸気を噴き出す温泉のこと。新潟市秋葉区の「新津温泉」は、アトピーなどの効能で知られる。同時に、かつて石油の採掘で大繁盛した土地柄らしく、「石油臭の温泉」としても全国的に有名だ。この「新津温泉」は間欠泉で、3、4カ月の周期で地中から温泉が激しく噴き出すという。
「新津温泉」がある新潟市秋葉区のお隣が五泉市。同市の議会は「間欠泉」、あるいは活火山みたいな代物だ。周期こそ不定期ながら、何年かに1度、ドカンと温泉を噴き出すか、大規模な爆発を繰り返す。既に忘れ去られているようだが、ひと昔以上前の平成20(2008)年7月、前代未聞の大爆発を起こした。同年同月に招集された臨時議会でのこと。この議会に提案されたのが新しい村松体育館(現在の『さくらアリーナ』)建設に伴う工事の契約案件だった。当時は五十嵐基前市長の時代で、合併前の村松町長を務めた現在の伊藤勝美市長は副市長だった。
改築前の村松体育館は老朽化が進み、雨漏り対策でバケツやタライが並ぶようなありさま。体育館を新築する工事の指名競争入札が行われたのは平成20年7月1日のこと。建築本体は水倉組が8億4千万円で、電気設備はユアテックを筆頭とする共同企業体が1億6千300万円でそれぞれ落札した。当時、これらの入札は「談合なしのガチンコ勝負」と言われた。それはともかく、1億5千万円以上の工事について、落札段階ではまだ仮契約。本契約には議会の議決が必要だ。
社民党の県議から市長に転身したのが五十嵐前市長。当時、保守系が多数を占める市議会とは何かとギクシャクしていた。「ガチンコ勝負」の入札だったわけだが、一部に「官製談合」だの「市長と一部業者との癒着」だのといった怪文書も出回った。
さらに議会では「なぜ一般競争入札ではなく、指名競争入札だったのか」といった疑問や、爆弾発言みたいなのも飛び出して、結局2件の契約案件は否決されてしまった。2件で10億円超の契約が吹っ飛ぶなど、まさに前代未聞。
気の毒だったのは落札したものの契約を否決された建設業者らだった。
もっとも、当時は「あの額の落札では出血工事になること必至」と言われた。今考えると議会が契約を否決したのは業者側にはプラスだったかも…。その後、村松体育館の建築本体と電気設備について再入札が行われ、それぞれ初回とは別の業者が落札。議会で噴出した各種の疑惑を解明するため、平成
20年の9月議会で行政調査特別委員会(百条委員会)が設置されるという、世間を揺るがす大騒動に発展した。
10億円超の契約が吹っ飛んだ平成20年は子年。あれから12年、「天災は忘れた頃にやってくる」という。同じく子年の今年9月、今度はバス購入の契約で、五泉市議会で〝ちゃぶ台返し〟が勃発した。…続きは本誌