データが物語るコロナ禍の給料事情
2020年08月27日
新型コロナウイルスの影響により、収入が減少した世帯に30万円を支給するという政府の特別給付金は、土壇場で一人10万円になった。5月以降に給付が始まった。同じく大打撃を受け、収入が一定程度減った事業者や個人事業主には、最大で200万円ないし100万円の持続化給付金が支給された。市井からも収入が減ったとかボーナスが出なかったという悲痛な叫び声があがった。実際はどうだったのか。
国から臨時ボーナス?
個人で学習塾を運営しているという新潟市のA子さんは、3月の売り上げがゼロになった。
「会社と請負契約を結び、会社内の1室で教室を運営しています。月収は9万円弱です。2月27日に安倍首相が全国の学校に一斉休校を求め、3月2日から休みになりましたよね。これを受けて会社も『当面、生徒を受け入れない』とし、会社もこの間、閉鎖しました。結局、3月いっぱい生徒を受け入れなかったことにより、私の3月の“売上”はゼロになりました。
持続化給付金の対象は、『前年同月比50%以下』でした。私のケースでは、ゼロになった3月の収入が対象になりました。個人事業主として毎年、確定申告をしていたからでしょうか、ネット上で申請してから1ヵ月後ぐらいに満額の100万円が振り込まれました。
以降、教室はコロナ対策を施しつつ通常運営になりました。7月までに、生徒さんの増減による収入の増減はあったものの、新型コナによる収入減はありません。たった1ヵ月だけ収入がゼロになったことで100万円を手に入れたわけですが、さらに10万円の定額給付金を家族分(5人)いただいたので、何だか申し訳ない感じがします。主人のお給料ですか? 減っていませんし、夏のボーナスも減額されずに支給されました」
本人の口からも発せられていたが、まるで坊主丸儲け。国から臨時ボーナスが出たようなものだ。
こうしたケースは無論、レア。筆者の周りから話を聞く限り、個人事業主は、軽貨物のドライバーを除き、軒並み売り上げ(収入)が減ったと答えた。だが、持続化給付金をもらえるほど減っていないという事業主も少なくなかった。給付を受けた人では、50%超の売上減が計3回あり、「マジでヤバイ」と深刻そうな人も。10万円の定額給付金を事業の運転資金に充てる人もいたなど、総じて明るい話は聞かなかった。
一方、サラリーマンでは、最も打撃を受けた観光業勤務者がいないからか、「給料が減った」という声は、実はほとんど聞かなかった。ただし、ボーナスが減ったという声はあった。夏は満額だが、冬は減額が決まっているという人も。特別定額給付金は、貯金にまわした人が多いものの、ステイホームが続く子供の自宅学習用の教材費、ルーターの入れ替えなどオンライン環境の整備、馴染みの店から持
ち帰り弁当を買うなど、投資や地元貢献に使ったという声が多かった。
では、公式統計は新潟県の実情をどう映し出したか。
個人事業主の売上や収入をまとめているデータは、個人企業経済調査や経済センサスなどがあるが、コロナ禍の影響を調べたようなタイムリーな統計は、残念ながらない。会社員やパートタイマーの給与は、毎月勤労統計調査(地方調査)が、その名のとおり毎月、統計を取っている。この新潟県調査から今年4月分と現状で最新の5月分を見てみる(表Ⅰ)。…続きは本誌